哀歓世界

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日射しが暑いせいか、入院生活が長かったせいかユイは軽く息を切らし、汗を流す。 病院を出てからもう随分と時間が経っただろうか。ユイは幾つもの鳥居を潜っていく。 長い階段を登り終えると、ユイの目の前には静寂な雰囲気が漂う神社が建っていた。 「さてと……」 その神社に着くなり賽銭箱に小銭を入れると、ユイは敷地の奥へと進んでいく。 細い小道を抜けるとそこには、墓地があった。ユイはその中の一つの墓石の前で足を止める。 未だ綺麗に飾られた花は、誰かが最近この墓石に来たことを物語っている。 「久しぶり、お姉ちゃん」 その真新しい墓石にはユイの苗字である、北風という文字が刻まれていた。
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