哀歓世界

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炎天下の中、一粒の滴が墓石へと落ちる。気づくとユイは涙を流していた。 「あれ、可笑しいな。いつもここに来ると駄目だ、今日は泣かないって決めてたのに」 ユイは姉のことが大好きだった。完璧とまでは言えないが、絵に描いたような優しい姉だ。 特に運動神経が良く、陸上部に所属していた彼女は陸上の世界では期待されていた。 だが、彼女は14歳という若さで亡くなり、死因は部活の練習の怪我だったと親に聞かされた。 「やっぱり弱いね、私は。お姉ちゃんみたいには、なれそうもないや……」 ユイはまだ小学生で、そんな自慢な姉を亡くしたショックはとても大きい。 生まれた時から常に一緒にいた。優しく、格好良く、尊敬できる姉。ユイには姉が必要だった。 「お姉ちゃん……私は、これからどうしたらいいの……?」
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