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「――で、漆姉さんを隔絶された学園に閉じ込めて、その上不祥事を起こしてしまった姉さんを三年前に家に押しつけるように連れてきた、 さらにはその後以降音信不通な父親が何の用?」
「うっ、 言葉の間に殺意が隠っている……ま、まあそれは本当に済まないと思ってる。 それは少しずつ償うよ――で、本題だけど」
一呼吸、間を置き、悠は正面を切るかのように口を開いた。
「漆に……頼みがあるんだ」
「私に……」
ゴクリと唾を飲む。
彼の一言で場の雰囲気が変わるのを慎は感じる。
緊迫、 緊張、 緊急。
悠がわざわざ家まで赴いたのには訳があると、慎は予想していただけに動揺を隠せなかった。
「本題を話す前に、まず私の仕事について伝えておかなければならない」
「え、父さんって働いてたの?」
「ちょっ、 働いてるに決まっているだろう!何で『えっ、 マジか!?』みたいな顔をするんだ――っと話を戻そう」
慎の一言で僅かながら場の空気が一瞬、 緩んだがすぐに圧迫された雰囲気に染まる。
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