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「粗茶ですが」
「おっ、ありがと」
まだ淹れたてのお茶を、悠の前に丁寧に置く。
湯気が立ち上る中、悠はゆっくりと口を付ける。
「既に客扱いな点は否めないが、有り難く頂くよ」
ごくっと両手で持って一口。
「――って苦っ! 苦すぎるよ慎!」
「"粗茶"と言ったでしょう?」
「意味がそのまんま過ぎる!」
ぶはっと、 お茶を吐き出しながら蒸せる悠。
慎はそのまま悠と向かい合うように座り、彼と正面から向き合う。
「……」
ぎゅっと慎の左腕に力が加わる。
言わずもがなそれは漆によるもので、彼女もまた正面にいる悠を睨んでいた。
(姉さん……)
腕から伝わる感覚が"憎悪"の感情だと慎は直感する。
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