交換留学

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「ちょっ、何よ! まだ何か用なの!」 当然、彼も怯んで手を離すかと思われたが、予想外にも彼の行動は違った。 あろうことか、真っ直ぐに沙希の目を見つめ、自分の意志を伝えるように、 「僕を……弟子にしてください!」 突拍子もない言葉により、沙希の頭はしばらく思考が停止してしまった。 ――――――――――― 「結局、 なし崩しのまま入門しちゃったのよね……」 今更ながら呆れた表情をする沙希。 しかし、苦笑いしつつも口元は笑みをこぼしている。 「慎は……私より弱いし、お節介だし、鈍感だし……でも」 頬を紅葉の色と同じように染め、誰にも聞こえないような小さな声で、 ボソッと呟く。 「優しいのよね……」 言って。 沙希は急に顔が熱くなるのを感じる。 それはさながら急に沸騰したかのような状態に似ており、一瞬で体に熱が充満したかのようだった。
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