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桐生結理はこちらを見ていた。
じっと。ひたすらに。
「桐生さん?」
彼女ははっとしたように
大きな丸い瞳をぱちくりさせた。
「え…ぁ、思ったより
部員少ないんですね。」
ここは
鹿さんもうさぎさんも
実は部員じゃないんだよ
などと
軽くジョークでも
言うべきなのだろうか。
「部員は俺だけなんだ」
自分の妙にクソ真面目な部分に
苛々する。
初対面とはいえ
フランクな態度で
先輩風でも
吹かせてやればよかったのだ。
「…!」
桐生結理は
一瞬驚いたような顔をして
何かに気づいたかのように
口ごもった。
顔で喋るタイプらしい。
ほとんど言葉を発しないのに
表情筋の動きは
やけにテクニカルだ。
本当にディベートができるのか
ますます不安になったが
初心者なのだから仕方ない。
俺は桐生結理に
部の存続が危機的状況で
部員があと一人
明日までに必要であることを
話した。
桐生結理は頑張ってみます、
とはにかんだ。
さすがにこんな女の子と
二人きりだとおかしくなるな。
とりあえず、今日は解散。
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