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『イオン!朝よ!』
『まだ眠いよお母さ~ん』
『何言っているの。今日はお兄ちゃんの旅立つ日でしょ?』
『あ、そうだった!』
再び僕は幻を見ていた。
今度は草の中で母猫と子猫が喋っている風景だった。
子猫は白色だった。
「あれが僕さ」
「イオン?どこにいるの?」
その問いにイオンは答えてくれなかった。
母猫はイオンを連れて草の中から出て行った。
草から出るとそこには道があって何匹かの子猫と大きな灰色の猫が一匹いた。
『も~イオン兄ちゃんお寝坊なんだから!』
『ごめんごめん!』
『しっかりしてくれよイオン。お前が兄弟で一番上だろ?』
『はい、レス兄ちゃん』
イオンはショボンとしていた。
子猫達はイオンの兄弟達で灰色の猫がイオンの兄らしい。
兄はレスと言った。
『レス……気をつけてね』
『わかってるよ母さん。じゃあな兄弟達よ!』
『兄ちゃん行ってらっしゃ~い!』
レスは尻尾を振りながら、お母さんと兄弟達に背を向けて去って行った。
その後ろ姿は誇らしげだった。
猫が魔王を倒すわけじゃないしなぜ旅をするのだろう?
「猫はレス兄さんのような年齢になると旅に出る決まりなんだ」
「お母さんから離れて寂しくないの?」
「仕方ないよ、決まりだし。もう大人なんだから」
イオンの声はどこか寂しげだった。
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