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「イオンは兄弟がいっぱいいたんだね」
「うん……」
「レス兄さんは?」
「いたよ。いたけど……大人になれたのはレス兄さんだけだった」
「……死んじゃったの?」
「……」
イオンはまた黙ってしまった。
幻は場面が変わったようで違う場面を映していた。
今度は子猫が高い木の上にいた。
木の根元には白猫が、木の上にいる子猫を心配そうに見上げていた。
『フィア!そんなところにいたら危ないぞ!』
『これくらい平気だもーん』
『危ないって!』
『平気だ――』
子猫は足を滑らし高い木から落ちてしまった。
大人の猫ならくるりと着地出来そうだったが子猫は背中から地面に落ちてしまった。
落ちた猫は即死だった。
「……僕の妹のフィアだよ。僕の兄弟は三匹でフィアが末っ子だった」
「……」
僕は言葉が出なかった。
レス兄さんにも兄弟がいたのだろう。
しかしイオンのように幼くして兄弟達を失ってしまったのだろう。
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