真っ暗闇の白い蝋燭

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「君は死んだんだね?」 イオンがそう言った。 その質問はどんな剣よりも鋭い質問だった。 「うん……ここはどこなの?」 「死の世界さ」 イオンは、当然でしょと言うようにそう言う。 確かに僕は死んだ、だからここにいるのは当たり前か。 トマトを持って、これはトマトですか?と言っているようなものだ。 「そして生の世界でもある」 「生の世界?」 「うん、言い換えれば出発の世界かな?」 死の世界と生の世界は真逆だ。 そしてイオンは出発の世界だと言った。 イオンの言っていることが僕にはよくわからなかった。 なぜ出発?と。 そもそもイオンは何者なのだろう。 いや、猫にはちがいないけど。 「さぁ行こうか、君名前は?」 「僕は……勇者」 「勇者?ははは、おもしろいことを言うね」 「だって勇者なんだもん」 「勇者なんてのは肩書きさ。僕は猫、だけどイオンという名前がある。君も同じようにあるだろう?」 そういえばそうだ。 人には名前がある、動物にも植物にも。 僕の名前……? みんなから勇者と勇者と言われていて名前を忘れかけていた。
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