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『元気な男の子ですよ』
『よくやったなお前!』
僕は幻を見ていた。
……いつから?
幻は突然始まった。
名前を思い出そうとしていた時に幻が始まっていた。
その幻はひとりの女の人が赤ちゃんを産んでいるシーンだった。
『あなた……この子に名前つけてあげて』
『名前?そうだな……この子はチペリなんてどうだ』
『チペリ……何か意味があるの?』
『……特にない』
『なによそれ……まぁいいわ……。私のかわいい……チペリちゃん』
『お、おい?どうした?』
『あな……た。チペリちゃん……を……よろし……』
『お、おい!!』
『奥様どうなさいました!?』
かわいそうに。
この赤ちゃんは産まれてからすぐにお母さんを亡くしたらしい。
そういえば僕も産まれてすぐにお母さんが死んだとお父さんが言っていた。
この赤ちゃんと似たような感じだった。
ただそれに同情しながら、だけど僕は他人事で幻を見ていた。
「思い出したかい?」
「……イオン?」
「その様子だと君は覚えていないみたいだね。無理もないか、産まれたころなんて誰も覚えてなんかいないさ」
「え?……今のって……僕?」
「そう。君はチペリという名前だよ」
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