1杯目

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ただあてもなく、悠翔は通りをさまよい歩く。 今は何も考えたくなかった。 ぼんやりとした意識で月を見上げる。 うっすら雲がかかった様は、まるで彼女みたいだ。 周りを見渡せば、寒さに身を寄せあう恋人たちが足早に歩みを進める姿がいやに目につく。 そんなのはたんなる気のせいでー 今の自分が、カップルに敏感になっているだけなのにー わかっているのにー 思わず涙がこぼれそうになる 辺りを見渡すまでもなく、視界には数えきれないくらいの人間がいた。 そう、世の中に人なんて腐る程いるというのに。 なぜよりによって彼女だったのだろうか? 悠翔は力なく首をふり、息を吐いた。 そんな事は考えるだけムダだ。 ふっ、と自嘲じみた笑みを浮かべ彼は再び歩きだした。
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