1杯目

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悠翔は、重たくなる瞼をゆっくりと閉じた。 この程度では人は死にやしない。 頭のどこかでぼんやりと考えながら、彼は目を閉じる。 「あら…」 視界を閉ざした彼の耳に、幼さを残した声が飛び込んできた。 だが、その声の主を見る気力はない。 どうでもいいのだ。 どうでもいい… と思っていた。 「見たところ、死にぞこないって所かしら? 人生に絶望した、生きる希望を失った… だから死んでしまいたい!」 悠翔はハッと目を開けた。 ふわふわした腰までのびるブラウンの巻き髪。 大きな真っ赤なリボン。 くりくりとした、大きな瞳。 まるで西洋のお嬢様のような少女が彼の前に立っていた。 芝居じみたトーンで、腕を大きく広げた少女がにんまりと微笑む。 「なんで知っているかを聞きたいの? 私はなぁんでも知ってるのよ わからない? わからないでしょうねぇ 私はあなたの常識から外れた世界の人間だもの」 彼に口を開かせることなく、少女は饒舌に言葉を続けた。
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