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「なぁ、聞いてんの?角都」
やはり俺は
老化が進んでいるらしい。
いつもなら俺を小馬鹿にした
様に軽々しく見てくるはずの
コイツの目が、まっすぐに、
そして酷く意味有りげに、俺を
見つめている様に見えてしまう
いつもなら暑い暑いと項垂れて
3センチ以上は近寄らないはず
のコイツが、俺の本を持つ腕に
手を置いて顔を覗き込んでいる
ように見えてしまう
熱は人をおかしくさせるという
のは、何度か聞いた事はあった
けれど、信じてはいなかった
たかが7月の夏の暑さに
やられて、幻聴だけならまだ
しも、幻覚や感覚麻痺にまで
かかってしまうなんて
「聞こえてんのに、
無視なんてすんなよ。」
飛段が、見た事がないくらい
しおらしげに笑う。
「俺らはさ…
幼馴染みだろ?」
すべては
この夏の暑さのせいなんだと
伝えたい
近づいて来た飛段の顔に
本を辞めて自分から
近づいていったのも
ゆっくりと目を伏せてゆく
飛段の肩に手を置いて自ら
招きいれる様な事をしたのも
すべて
気の迷いだった事にすれば
良いのだ
「灰色っぽい奴ってさ、
俺も当てはまんねぇかな?」
二人の距離は、あと2ミリ
"ガチャン"
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