♯01

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9時を少し回った頃、宴が終わり、みんな揃って店を出た。 4月に入り、気候も幾分穏やかになってきてはいたものの、夜はやっぱり冷え込む。 私は、スプリングコートの前ボタンを閉め、ストールをきつめに巻いた。 『それじゃぁ、帰りますか。』 課長のひとことで、みんなの足が駅に向かって動き出した。 『課長~。明日は家族でお出かけですか~?』 『いやぁ、子供達は習い事があるんだよ。』 『僕は妻とデートですよぉ。課長も、奥様とどうですか?』 『デートかぁ。ハッハッ。』 課長と愛実と柳井さんが、足並み揃えて話盛り上がる中、私はそれをすぐ後ろで聞いていた。 時々、話の内容につられて笑ってしまいながらも、コートのポケットに手を入れて周りをキョロキョロ見ながら歩く。 その私よりちょっぴり後ろを、藤木さんが、私と同じような格好で少し下向き加減に歩く。 金曜日というだけあって、街中はいつもよりなんとなく賑やかで、人の行き来も多かった。 駅に向かうこの道は、美容院や飲食店…お花屋さんや本屋さん、色々な店が並んでいる。 私が今の部署で働くようになって、この4月で3年目になる。けれど、この辺りを自ら探検することがなかったため、どこにどんな店があるのかまで把握していなかった。 こんな店もあるんだぁ…。 今日みたいな飲み会の帰りに、初めて目にするお店もある。だから、こういう時はあえて周りの会話には入らずに、1人景色を楽しむのがちょっとしたマイブームだったり。 .
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