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『それでは、カンパ~イ。』
『『『カンパ~イ』』』
『ありがとうございます。』
私のための宴が始まった。
仕事オフに切り替わった課長の、心のこもった長い長い言葉を聞いて。
そのあと、グラスをぶつけ合う音を見たり聞いたりしながら、私は今日も低姿勢にお礼を述べた。
だけど、この宴の主旨を気にしているのは私だけで。他の人は単純に“飲み会”を楽しんでいるように見える。
その様子を見て、ホッと救われた気持ちになるけれど。
『梨花。辛かったら泣いていいんだよ?』とか。
『葉月ちゃんは、別れてもすぐ男が出来て羨ましい。』とか。
『葉月さんには、どういう人がいいのかなぁ?』とか。
そんな会話が出てくれば、油断してた心も再びキュッと固まってしまう。
『葉月?次…オレンジジュースにしとくか?』
飲み会の時はたいてい私のとなりに座る藤木さんが、何ともない話を振ってくる。
彼にしては珍しく、今日はいつもほど、私の恋愛話には首を突っ込んでこなかった。
それが、私の気持ちを軽くしてくれていた。
もしかして…。さすがの藤木さんも気を遣ってくれてるとか?
まさかね…。ははっ。
『あ、うん。ジュースにしとくッ。』
『はいよ。』
『あっ…あとぉ。このパフェも食べたいなぁ。』
『かしこまりました。葉月お嬢様。』
『うむ。頼んだぞ、藤木。』
『こら、葉月。調子に乗って~。月曜日、覚えとけよ?』
『ごめんなさ~い。』
『はははっ。』
飲み会の時は、態度も言葉遣いも無礼講。
私は、自分の素の笑顔を藤木さんに向けていた。
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