♯01

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『それでは、カンパ~イ。』 『『『カンパ~イ』』』 『ありがとうございます。』 私のための宴が始まった。 仕事オフに切り替わった課長の、心のこもった長い長い言葉を聞いて。 そのあと、グラスをぶつけ合う音を見たり聞いたりしながら、私は今日も低姿勢にお礼を述べた。 だけど、この宴の主旨を気にしているのは私だけで。他の人は単純に“飲み会”を楽しんでいるように見える。 その様子を見て、ホッと救われた気持ちになるけれど。 『梨花。辛かったら泣いていいんだよ?』とか。 『葉月ちゃんは、別れてもすぐ男が出来て羨ましい。』とか。 『葉月さんには、どういう人がいいのかなぁ?』とか。 そんな会話が出てくれば、油断してた心も再びキュッと固まってしまう。 『葉月?次…オレンジジュースにしとくか?』 飲み会の時はたいてい私のとなりに座る藤木さんが、何ともない話を振ってくる。 彼にしては珍しく、今日はいつもほど、私の恋愛話には首を突っ込んでこなかった。 それが、私の気持ちを軽くしてくれていた。 もしかして…。さすがの藤木さんも気を遣ってくれてるとか? まさかね…。ははっ。 『あ、うん。ジュースにしとくッ。』 『はいよ。』 『あっ…あとぉ。このパフェも食べたいなぁ。』 『かしこまりました。葉月お嬢様。』 『うむ。頼んだぞ、藤木。』 『こら、葉月。調子に乗って~。月曜日、覚えとけよ?』 『ごめんなさ~い。』 『はははっ。』 飲み会の時は、態度も言葉遣いも無礼講。 私は、自分の素の笑顔を藤木さんに向けていた。
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