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『あ…。』
私が歩いている右側に、輸入雑貨らしき物を売るお店が目に留まった。可愛らしい店の作りに思わず足を止めてしまう。
すでに営業は終わっている時間らしく、店頭ディスプレイをほんのり照らす程度の明るさしかない電飾が、通り過ぎようとした私を振り向かせたのだ。
そこに並べられたアンティーク調の小物が、控えめながらも存在感をしっかり出している姿に思わず頬が緩んでしまう。
『葉月~?置いてくぞッ。』
すぐ後ろにいたはずの藤木さんが、いつしか私の数メートル先にいた。
『あっ、は~い!』
顔をあげて返事をしてからもう一度、店のディスプレイに目を移し、名残惜しげに自分の目と脳裏に焼き付けていく。
今度、仕事帰りに来てみよう。
そんな小さな楽しみが1つ出来たとき…。
私の耳に、今まで聞いたことがないくらいの甘い声色デシベルが響いた。
『今日は、本当にありがとうございました。』
男の人の声。
少し遠くから聞こえる声。
どこ…?
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