♯01

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視線がぶつかった。 今、確かに…こうして…私たちは見つめ合っている。 でも、私の方は。彼に吸い込まれそうになっている。 暗がりでも辛うじて分かる彫りの深い顔立ちが、私のハートを土台に彼の印象を彫り上げていく。 ドンッ ドンッ ドンッ…。 そのハートの扉がノックされている。 誰が叩いてるかって? 彼に決まってるじゃない。 でも、ノックする必要なんてないのに…。ノックなんてしなくたって、私から扉を開けちゃうのに…。 私の口は少し開き、息は吸ったまま止まり、目は何回も瞬きを繰り返していた。 向こう側の彼は、首をちょっぴり傾けて、確実に私を捉え直す。 その仕草だけで、私の体温が急上昇する。 それから彼は、私から視線を外さずに口許を緩めた。 『あ…。』 自分でも、何だか分からなくなって、情けない声が漏れる。 そして、私もつられるように口許を緩めてみた。 彼は、それを見届けたあと、静かに店の中へ入って行った。 彼の背中はやっぱり大きくて、Tシャツには店のロゴがプリントしてあった。 あの大きな体で抱きしめられたら、どんな感じなんだろう…。 大人の女性が夜な夜な思い描くようなコトではなくて、あどけなさ残る少女が期待に胸を膨らますような…。 そんな純粋な気持ちが、たった今、私の胸の中に生まれた。 ドンッ ドンッ ドンッ。 またこの音だ。 .
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