♯00

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『葉月…。今回は長くない?』 『8ヶ月…です。』 私の前の席に座ってる人。 彼は 藤木 航平(フジキ コウヘイ)。 独身で30歳。 私がこの部署に異動して来たときに“直属の上司”として私の仕事の面倒をみてくれた人。 誰もが出来なきゃいけない仕事とか、この部署でうまく過ごしていく精神面とかは、愛実に教えられてきた。 でも、ここに配属されて私に任せられた業務は、彼が担当している仕事を補佐していくものだった。そのため、業務の本質的なところを丁寧に教えてくれたのは彼だった。 私にとって、本当に尊敬できる先輩でもある。 いつも“男女平等だ!”と言ってはいるけれど、負担の大きい仕事は自分が進んで引き受けてる。 そして、おいしい仕事は私に回し、花を持たせてくれるのだ。 だけど…。 『葉月~。そろそろちゃんと決めないと、結婚出来なくなるぞ~。ワガママ言ってないでたまには我慢だ。我慢!ハハハ。』 藤木さんは…。 いつも、ひとこと多い…。 これでも、異動したての頃、私はちょっぴり彼に心ときめかせていた時もあった。 仕事に対しては真面目。仕事に慣れてない私を常にフォローし、失敗しても落ち込まないように次のステップへのアドバイスをくれる。 怒られるとショゲてしまうタイプの私には、こういう藤木さんみたいな人に、胸がキュン、となってしまう。 ただ、プライベートな会話では、いつも私の神経を逆なでするようなことばかりを言うから、私はそのギャップに戸惑い傷つくこともしはしば…。 それが、私の心を“本気”に出来なかった理由。 以来、藤木さんは私の中で“頼れる先輩”止まりになっていた。
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