プロローグ

2/5
前へ
/62ページ
次へ
――十数年前のある日。 『ぼくね、キノのヒーローになる!』 『……ショウくん?』 毎週日曜日の朝、戦隊ヒーローの番組を見ながら、僕――佐孝翔磨(サコウ ショウマ)はそう宣言していた。 そんな僕の隣に居るのは、幼馴染みの光來希望(コウライ キノ)。家が近く、幼稚園のクラスも一緒だった希望と僕は、まるで兄弟のように常に一緒にいたのだ。 ――それは、子供らしい他愛もない約束。 だけどそれは、子供らしい純真無垢な約束。 月日が過ぎて、希望がこの街から姿を消しても、心の奥底に秘められたこの約束は色褪せることは無かった。 『ほんとうに、わたしをまもってくれるの?』 ――希望の為なら、いつだって守ってやるよ。 『ぜったいに、わすれちゃだめだよ……』 ――忘れるもんか。 あれから月日が過ぎても、希望はあの頃の姿で僕に問い掛けてくる。 小学五年生までは一緒だったのに、思い浮かぶのはいつもあの時の幼い希望の姿だった。 きっと、それほど印象強く心に刻まれているのだ。僕はそう思っていた。 刻まれている限りは、希望に会える。そうしたら、希望を守ってやれる。 ――僕はそう信じていた。 だけど。 決意していたのに。 望み通り希望とまた会えたのに。 希望を守ってやる事は、出来なかった――。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加