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――十数年前のある日。
『ぼくね、キノのヒーローになる!』
『……ショウくん?』
毎週日曜日の朝、戦隊ヒーローの番組を見ながら、僕――佐孝翔磨(サコウ ショウマ)はそう宣言していた。
そんな僕の隣に居るのは、幼馴染みの光來希望(コウライ キノ)。家が近く、幼稚園のクラスも一緒だった希望と僕は、まるで兄弟のように常に一緒にいたのだ。
――それは、子供らしい他愛もない約束。
だけどそれは、子供らしい純真無垢な約束。
月日が過ぎて、希望がこの街から姿を消しても、心の奥底に秘められたこの約束は色褪せることは無かった。
『ほんとうに、わたしをまもってくれるの?』
――希望の為なら、いつだって守ってやるよ。
『ぜったいに、わすれちゃだめだよ……』
――忘れるもんか。
あれから月日が過ぎても、希望はあの頃の姿で僕に問い掛けてくる。
小学五年生までは一緒だったのに、思い浮かぶのはいつもあの時の幼い希望の姿だった。
きっと、それほど印象強く心に刻まれているのだ。僕はそう思っていた。
刻まれている限りは、希望に会える。そうしたら、希望を守ってやれる。
――僕はそう信じていた。
だけど。
決意していたのに。
望み通り希望とまた会えたのに。
希望を守ってやる事は、出来なかった――。
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