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――あれは、小学五年生の終わりの頃だった。
「えっ……キノ、転校するってどういうこと?」
あまりに突然で、ぼくは呆気にとられてしまった。
「……ショウくんにしか、まだ言ってないから……」
スカートのフリルを掴み、破ってしまうんじゃないかと思う程、強く、悔しそうに握り締めているキノ。
静かに、淡々と話す声は、微かに震えていた。
「……私、お父さんのお仕事で、イギリスのインターナショナルスクールに通わなきゃいけないんだ……」
何で――と言いかけて、止める。
キノの家は、いわゆる転勤族というカテゴリーに属していて、キノのお父さんが勤めているのは、海外に支店を置く大企業だった。
キノと出会って八年間。
その間も、キノのお父さんは近くの営業所を転々としていた。
近くだからこそ、八年間はこの同じ家に住めていたのだ。
前にも同じ様な事があり、その度にキノは、ぼく一人に伝えて悲しそうに俯いては、その後に詳細を知って、「……近くだから、引っ越ししなくて良い……」と静かに、だけどどこか嬉しそうに言うのだった。
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