離別

4/8
前へ
/62ページ
次へ
「……ごめんなさい」 キノが俯きながら言う。 その涙声を聞いて、ぼくは気付く。 キノを、目の前の女の子を、悲しませてはいけない、と。 ――それが、ヒーローなのだ。 どんな事であっても。 どんな事があっても。 キノを守り抜く事、それこそヒーローとしての仕事であり、使命ではないのか。 ならば、これ以上キノに悲しい思いをさせるのはいけない。 形だけの、名前だけの「ヒーロー」じゃいけない。 そこで、ぼくはこう考えた。 気丈に振る舞って、笑顔で送り出す事が、キノにとっても、ぼくにとっても、一番良い事なんだと。 泣いていたら、ただ不安を煽るだけなのだと――。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加