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私は情報の偏りを無くすため全国紙を5紙購読している。 目覚めのコーヒーとともにそれらを一通り眺めるのが毎朝の日課となっている。 私はガスの火を止めタイマーできっちり1分間計って沸騰したお湯を冷ます。 豆には一家言有る。そこらの専門店でセレブや小生意気な趣味人のために陳列されている豆では満足しない。私は違いの解る男だ。犯罪現場の些細な不自然さを見逃さないベテラン刑事のようにスーパーのチラシを見比べ、ネスカフェゴールドブレンドが一番安く購入できる店まで、まだ走るという理由だけで乗り続けている愛車を走らせる。 脱走者に気づいた刑務所の非常ベルのようにタイマーが鳴った。私はティースプーンできっちり2杯分ネスカフェをカップに入れお湯を注ぐ。スティックタイプの砂糖とミルクを入れかき混ぜる。近所のファミリーレストランから謝礼としていただいたものだ。 私は犯罪を許さない男であるが、小さな犯罪には寛容な心を持っている。
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