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「朝早く失礼します。僕はこの度上京したばかりで会社を立ち上げました。まだ設立間もなく取引会社も少ない状態ですのでこうして各家庭を訪問しております。何かリサイクルできそうな物ないでしょうか? 例えばいらなくなった家電製品やTV・オーディオから古新聞古雑誌などでも結構です」
小さくても若くして社長か。上京したばかりにしては訛が無い。きっと商売のため努力して直したのであろう。私はこの青年に好感を持ち始めていた。
「うーん。うちにあるのはまだ使えるし。古新聞と空きペットボトルならあるけど」
「それで結構です。どれくらいありますか?」
私はキッチンの隅に束ねた古新聞約10キロ分と45リットルのごみ袋いっぱいに入ったペットボトルを玄関に運んだ。
「ご協力ありがとうございます。これは謝礼です」といってパックの洗剤を右手に置いた紙袋から取り出した。
「いや、どうせゴミだし、そんな謝礼なんていいよ」私は本心から口にしていた。まだ開業間もない零細起業家にとってはたかだか洗剤でも貴重なはずだ。
「そんなわけにはいきません。今後のおつきあいのためにもお受け取りください」
なるほど。家電製品はともかく古新聞やペットボトルで良いならいくらでも協力できそうだ。私は遠慮なく赤に水色の渦巻模様のパッケージをした洗剤を受け取った。
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