リベッタ村

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ルーアンがジュリアに話しかける。 「今日も忙しかったんですか?」 「えぇ。おかげさまで、ありがとうございます」 「いえいえ、ジュリアさんという看板娘がいるからこそ、いつもお客さんでいっぱいなんですよ」 そう誉めて、ルーアンはまた笑みを溢す。 女性を虜にする微笑。 始めの頃はジュリアもどぎまぎしていたのだが、彼女は良くも悪くも彼の笑顔に見慣れてしまっていた。 まぁ、仏頂面のルーアンなど一度も見たことがないが。 「あら、誉めても何もでませんよ?」 ジュリアは冗談ぽく笑う。 「いえ、本当に――」 その時、ドアのベルが来客を知らせる。 「いらっしゃいませ!……すみません、少佐」 彼に一言断って、ジュリアは客を席へと案内する。 明るく働く彼女を、ルーアンはその目に捉えていた。 客に微笑みかけるジュリアに、彼もまた優しい眼差しを送っていた。 ***** もともとカフェを始めたきっかけは、エドガーがコーヒー好き。ミラがケーキ好きだったからである。 ケーキはすべてミラの手作りで、これのために来店する客は多い。 午後の店内は、主婦を始めとする女性客で賑わう。
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