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時には客とおしゃべりをし、時には買い出しに出かけ、ゆったりとした時間を過ごす。
そして、夕方になるほど、客足も少なくなる。
それはジュリアたちの店に食事メニューがあまりなく、夕食をとる客が少ないため。
皆夕食のために他の店に移動したり、家路に着くのだ。
そして午後七時、閉店。
「それじゃ、お先に失礼します」
アルバイトのスタッフは上がり、残りの締め作業をジュリア一人で行う。
「お疲れ様でした」
ジュリアは彼女に手を振った後、窓の外を見る。
まだ外が明るい。
陽があるうちは、カーテンを閉めない、いや閉められない。
ジュリアは箒をぎゅっと握りしめた。
――怖いのだ。
カーテンを閉めると、夕陽が部屋中を真っ赤に染める。
あの血溜まりのように。
だからジュリアは、どんなに眩しくとも一人の時はカーテンを閉めない。
あの時の恐怖が頭に焼き付いて離れないのだ。
――……どれくらい考えこんでいたのだろう。
そうこうしているうちに、陽が沈み、辺りはすっかり暗くなっていた。
「あ……いけない」
慌てて掃除を再開したその時、――表のベルが鳴った。
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