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聞き慣れた音にジュリアは振り返る。
入ってきた人物を見た瞬間、彼女は思わず身を固くした。
そこには、三十歳前後の長身の男が立っていた。
癖の強い黒髪を後ろですべて一つにくくり、頭にはひしゃげた帽子。
ワイシャツからは素肌が覗き、黒いズボンをブーツの中に入れ込んでいる。
そして男の腰には、剣とピストルがあった。
剣とピストルを携帯した男など、珍しくないのだが、ジュリアが驚いたのはそこではなかった。
『長身、黒髪長髪、歳は三十前後』
そのすべての条件が、警察の捜査線上に浮かび上がったエドガー殺害の容疑者と一致するのだ。
――そう、エドガーを殺した犯人は、未だ捕まっていない。
彼女は三年間、父親を殺した犯人を追い続けているのだ。
父親が亡くなった当初は、そんな男を見るたびに通報していた。
けれど、この三年間で彼女は学んだ。
『警察は、不確かな情報では動かない』
『警察は、容疑者らしい男を見ても、やる気があるように見えない』
『警察は……父を殺した犯人を捕まえられるように思えない』
そして、彼女は決めたのだ。
『犯人を裁くのは、警察でも法律でもない。……この私』
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