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「いやぁぁぁ!!」
ジュリアは悲鳴を上げ、ベッドから飛び起きた。
全身の血が逆流し、毛穴という毛穴から汗が吹き出す。
自分の意思とは関係なく、手がぶるぶる震えていた。
けれども化粧台、クローゼット、机に本棚、そしてベッド。
辺りのものが視界に入り、ここが店ではなく自分の部屋とわかると、彼女は止まっていた息をようやく吐き出した。
瞳を隠すように右手を当て、ゆっくり息を整える。
――また、あの夢だ。
まだドクドクと、心臓が脈打つ音が聞こえる。
……さっきの夢は、夢であって夢でない。
彼女が父親の遺体を発見したのは、三年前のこと。
今のは、あれから度々見る夢なのだ。
もちろん後半部分は夢なのだが。
忘れたことなど、一度もない。
血溜まりの父。
ひどく歪んだ表情。
自分を見上げるその瞳。
あの光景が、瞼の裏に焼き付いて離れないのだ。
ジュリアは、ベッドから出ると、クローゼットの前に立った。
クローゼットの鏡に自分の姿が写っている。
燃えるような長い赤髪。父親と同じ色だ。
彼女はいつも鏡に写る自分の姿を見て奮起するのだ。
『パパの娘がこんなことで挫けてはいけない』と、己を奮い立たせる。
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