リベッタ村

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そんな平和な街に一角を構えるのが『cafe Arthur』ジュリアの実家だ。 ダークブラウンを基調にした建物は、店主エドガーの注文の下デザインされた。 正面に構える入口を開けると、カウンターがあり、右端にはレジを設置している。 店の窓側にはテーブルが並び、カウンターの奥が厨房へと続いている。 一階が店舗スペースで、二階が居住スペースだ。 着替えを済ませたジュリアは、自分の部屋を出てダイニングに向かう。 白いTシャツと黒のカプリパンツ。 長い髪は高く結わえるのが、ジュリアのいつもの服装だ。 キッチンでは、金色のウェーブヘアの女性が朝食の用意をしていた。 「おはよう、ジュリア」 ジュリアに気づくと、彼女は優しく微笑んだ。 彼女はミラ。ジュリアの母親だ。 「おはよう、ママ」 軽く頬にキスをする。 微笑んだ彼女を見て、ミラは心配そうな表情を見せた。 「……大丈夫?」 母親の問いかけに、ジュリアはすぐさま理解する。 今朝の彼女の悲鳴が、ミラにも届いていたのだろう。 ミラは、ジュリアが父親が死んだ時の夢を見ることを知っている。 彼女がその時のことで、どれだけ辛い思いをしているのかもわかっている。 ミラは、ジュリアの心を心配して訊ねたのだ。 「平気よ、ママ。心配しないで」 ジュリアはにっこりと笑った。 母の心配を少しでも拭いさるように。
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