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愛おしい。
彼を奪ってしまおうか。そのまま何処か知らない場所で、2人だけの生活をすればいい。
なんて、何度考えた事か。
それでもなんとか思い留まる事が出来るのは
「…ん。山ちゃん?」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
彼のこの優しい笑顔があるからかもしれない。
「んー?大丈夫だよ。」
ふにゃりと笑って寝起きのとろけるような甘い声を発する彼。
「裕翔、」
そんな彼の唇に俺の唇を重ねると、寝ぼけ眼だった彼の目が見開かれた。
「や、山ちゃん…!」
真っ赤な頬が愛おしい。
「裕翔、好きだよ。」
思った事をそのまま口してみると、彼は恥ずかしそうに俯いた。
「お、れも…。」
こうしていると普通の学生になったみたいで、何だか不思議な感じだ。
「好き。好きだよ。裕翔が好き。」
どんな形にせよ、俺は彼の事が好きで、彼も俺の事が好き。
学生とか、芸能人とか。
そんな事はもはや、俺には興味が無い。
「好き…。や、山ちゃんの事、大好き。」
今は、彼のこの言葉さえあれば他に何もいらない。
だからどうか、
彼がずっと俺の手を離しませんように、と願いを込めて。
「裕翔。愛してる。」
絡ませた指を更に強く握った。
end
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