留守番電話と彼の涙

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駅前の階段下。 それは人通りの少ない場所で、彼なら絶対に知っている場所。 前にも何度か待ち合わせた事があった。 もう、ずいぶん前の事だけど。 コンクリートの壁に背中を預けると冷たい風が吹き抜けた。 寒いはずなのに。 なぜだろう。少し熱い。 手には汗がにじんで、いつになく心拍数が上がっていた。 待ち続けて40分。 (来ないの、かな。) 覚悟はしていたが、来てくれるって信じている自分を嘲笑った。 今更、都合が良いよな。 (でも、あと10分だけ。) 本日何度かわからないため息を吐いて時計を見た時、聞こえた音。 ゆっくりとした歩調。 弾むようなテンポ。 それは紛れもなく彼の足音だった。 _
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