943人が本棚に入れています
本棚に追加
駅前の階段下。
それは人通りの少ない場所で、彼なら絶対に知っている場所。
前にも何度か待ち合わせた事があった。
もう、ずいぶん前の事だけど。
コンクリートの壁に背中を預けると冷たい風が吹き抜けた。
寒いはずなのに。
なぜだろう。少し熱い。
手には汗がにじんで、いつになく心拍数が上がっていた。
待ち続けて40分。
(来ないの、かな。)
覚悟はしていたが、来てくれるって信じている自分を嘲笑った。
今更、都合が良いよな。
(でも、あと10分だけ。)
本日何度かわからないため息を吐いて時計を見た時、聞こえた音。
ゆっくりとした歩調。
弾むようなテンポ。
それは紛れもなく彼の足音だった。
_
最初のコメントを投稿しよう!