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ymd side_
たまたま忘れ物を思い出して、一人で楽屋に戻った冬の午後。
すぐに帰ろうと思っていたはずの俺は開け放たれたドアの前で立ちすくんだ。
「ごめん裕翔くん!ノックすれば良かったよね…。あの、その、もう帰ったと思ってたから…!」
「ごめんね、山ちゃん。ごめんね!何でも無いの!」
そう言う君の目は真っ赤に腫れていて、次から次へと涙が溢れている。
何でも無いはずないだろう。
思い反せば前にも同じような事があった。
あの日も確か君は誰も居なくなった楽屋で一人で泣いてて、戸惑った俺は声をかけられなくて。
そのまま気付かれないように、君が泣き止むのを静かに見ていたんだっけ。
まぁ、悪く言えば覗き見ってやつ。
でも今回の場合は違う。
「山ちゃん…?」
「もう、黙って。」
気付けば君を抱き締めていた。
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