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君の言葉は以外にも俺の申し出を受け入れてくれた。
弾む心を悟られないように、冷静に海の見える駐車場に車をまわす。
海についても外はまだ寒い春の夜。
お互いに車から出ることはなく、車内での会話が続いていた。
車を停めてまっすぐ君を見つめながら会話は続いていく。
ふと沈黙がその場を支配していた。
しかし俺の目は君を見つめたまま沈黙に身を委ねていた。
君もその気配に気付いたのか君の瞳も俺をとらえていた。
理性と欲望の狭間で揺れ動いている俺を見定めるように…。
『私…。』
沈黙を破ったのは君の声だった。
わずかに欲望に傾きかけた俺は理性を取り戻す。
『そろそろ帰らないと…。』
時計をみるとあれから一時間が経っていた。
『もうこんな時間か。ごめんね、遅くまで。』
確かに女の子を連れまわすには遅い時間になっていた。
色んな期待と欲望の行き場を抑え込んでキーをまわす。
自宅前まで送り、淡い期待と欲望をどうしようかと考えていた。
『今日は楽しかったよ。ありがとね。』
『こちらこそありがとうございました。』
確か一人暮しという話だったのでお茶くらいと期待していたのだがなさそうだ。
君は一礼すると振り向き家へと歩き出した。
『🎵~』
不意にメロディーがなり、君が携帯を取りだし画面を見る。
一瞬俺の顔をみると急いで家へと入っていった。
その表情は何処か寂しげに、申し訳なさそうに見えた。
君を見送った後、俺の日常が戻ってきた。
ただ一つ変わったのは、今日はぐっすりと寝れそうな気がした。
それから君の事を目で追う回数が増えていった…。
あの日の帰り際の表情の意味を知りたくて…。
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