一二章 ホタルガリ

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  「もう……私には……その力がないのだ」 「やめよ、聞きとうないっ!」 「我が君……」 「もう、わらわにはお前など必要ない。わらわ にはこんなにたくさんの子供たちがいる」  だから――私に逢えなくても寂しくなどない。  そう言うのか?  もう私など必要ない、と。 「見よ。これほどに、我が子の数を増やしたのだ」  女神が手を広げると、池全体から一斉に青白い光がふわりと浮きあがった。それは、まるで水面から無数の星が生まれ出たような幻想的な光景だった。  だが、直久は次の瞬間その光の一つ一つがホタルであることに気づく。  あまり気付きたくなかったが、しかもそれが通常の5倍ほどの大きさであることも分かってしまった。ゴキブリよりデカイという驚愕の事実。きっと、2度も直久たちを襲撃した犯人たちに違いない。 「お前などに用は無い」  女神がくるりと背を向けた。
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