一章 イケメンはつらいよ

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 しかし、「マジかー!」と、なんだか嬉しそうな加藤の楽観的な声が、直久をはっとさせた。 「変だなあ? ここは俺だけの秘密の場所なのに。地元の人かな」  直久は、一気に脱力する。そして、そうだよな、幽霊のわけないよな、と小さなため息とともに、不安を吐き捨てることにした。 「秘密の場所って?」 「ああ、地元の人でもあんまり知られてないはずなんだ」 「何を?」  加藤は、それ以上答えずに、再び足を進めた。仕方なく、直久も追いかける。  だんだんと目標物に近づくにつれ、何故か速度を増す加藤の足。 (ちょ、カトちゃん、なんだよいきなり! めっちゃ早いしっ!)  首をひねりながら直久もペースを上げるが、加藤はさらに足を速めた。だが、どんどん引き離されていく。
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