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ついに、五メートルほど引き離された時だった。
「こんばんは」
誰の声だ、誰の! と突っ込みたくなるほど、爽やかな声が、加藤の背中越しに聞こえて来た。
ほどなく鈴が鳴ったような可愛らしい声が答える。
「こんばんは」
(若い女の子の声だ!)
すぐさま直久の『美人レーダー』が、ピンと反応した。
急いで、加藤に追い付くと、直久は背伸びをして加藤の頭の右側から、どれどれ、とその人物をのぞき込むことに成功する。
(お! 美人!)
大きな目が印象的な、清楚な美人だった。
その笑顔は、今が満開という紅梅を思わせた。可憐さの中に、凛とした強さがある。
女子大生だろうか。少なくとも自分より歳上だな、と直久は思った。あどけなさと同時に大人っぽい色気も感じた。
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