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これは是非とも、お近づきになりたい!
直久の全身がそう訴え始めた折、目を輝かせた直久とその女性の間に、加藤の頭が割り込んだ。
仕方なく、加藤の逆側から女性を見ようと首を傾けたが、再び加藤の後頭部に視界を遮られてしまう。どうやら、直久には見せまいとしているらしい。
(むっ)
さすがバスケットマンというべきか。こういう時の加藤のディフェンスは、誰も抜けないに違いない。なぜ、本番のゲームで同じ動きが出来ないのかは、問うてはいけない。
そして、同時に直久は悟る。つまり、直久より先に声をかけようとして、先ほど急に加藤の足が加速したのだ。
先に声をかけた方が、優先的に話ができるというルールはどこにも無いのだが、なんとなく納得できてしまう直久は、やっぱり加藤と同族なのかもしれない。
「あなたも、蛍を見に行くんですか?」
背後でひょこひょことジャンプする直久を完全に無視して、加藤は女性に話かけた。
「え? あなたたちも、その先の水田へ行くんですか?」
「うわ、誰に聞いたんですか!? 俺が見つけた穴場だと思ってたのになぁ!」
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