一章 イケメンはつらいよ

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  「まあ、穴場なんですね」 「そうですよ。地元の人でも、あまり知られてないって聞いたのに。毎年、すっごい数の蛍が見れるんですよ」 「そうなんだ。ラッキーだわ」 「ラッキーですよ!」 「ふふふ。お二人でいらしたの?」 「あ、後ろのちっこいのは気にしないでくださいね。あなたこそお一人ですか?」 「いえ、友達と一緒に来たんだけど、カメラを忘れたって、取りに帰っちゃったの」    すっかり弾みだした加藤と美女の会話を聞きながら、さっぱり面白くなくなった直久は、完全に加藤に背を向け夜空を見上げる。  満天の星空も、今はなんの癒し効果もありゃしない。完全に本来の目的を忘れた加藤を放置することにした直久は、しゃがみ込んで白い石を探すと、道路に、 『加藤のばか』 『あほ』 『ずるい』 『せこい』 『どすけべ』 『オレは天才』  などと、次々に思いの丈をぶつけ始めた。
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