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だが、それにもいい加減飽きてきた直久は、加藤の半袖シャツの裾を引っ張り、帰宅を促してみたが、やっぱり無駄だった。加藤に裾を引っ張り返されただけで、帰ろうという気配も感じない。
「それにしても、危ないですよ! こんな綺麗な子が一人でこんな暗い道にいるなんて!」
「田舎だもの、大丈夫よ」
「いやいや! 最近、このあたりで誘拐事件だか、失踪事件だかが多発しているらしいですから。気を付けた方がいいですよ」
「え、そうなの?」
「はい。今朝も全国ニュースでやってましたよ。四人だか五人だかの男性が行方不明になっているらしいです」
「この村で?」
「ええ、この村で。でも村人じゃなくて、県外から来ている人ばかりが行方不明になってるらしくて。自殺しに山に入ったんだか、失踪なんだか、遭難なんだか、事件なんだか全然分からないらしいですよ」
「そうなんだ。怖いですね」
「でしょう? だから、気をつけないと!」
(……やべえ、なんかトイレ行きたくなってきた……)
暇を持て余しきった直久が、そわそわし始める。
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