二章 腹黒い友人

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 案の定、先輩は翌晩も直久を悪の道に引き連れ込もうとしていた。 「だってさ、美女の誘いを断るわけにはいかないじゃん?」  夜、直久の同室の一年生が、早々に爆睡してしまうことを知っている加藤は、いつもにも増して得意げな顔で部屋に現れると、そう言ってのけた。 「え、あれって誘われたことになるの?」 「お前、ばっかだなーっ! 良く考えろよ。『また明日』って言われたんだぞ。誰がどう考えたって、また明日会いましょうねっていう意味だろうが」  そう言われてみればそのような気もするけど。いや、そうなのかもしれないけど。それを認めるのは、なんだか悔しい気もする。  だから、ベッドカバーを引き剥がし、夏掛けと布団の間に自分の体を滑り込ませて横になる。今晩は、加藤のお供をする気はないという最大限の意思表示だった。 「だったら、一人でいけばいいじゃないですか、どうせ俺は邪魔者だしい?」  
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