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言ったあとで、直久は少しだけ後悔した。
加藤に向けるべきものではないとは分かってるのに、なんとなく苛立ちが態度に出てしまう。なんで素直に応援してやれないのだろう。
加藤と昨日の彼女がうまくいけば、めでたい事じゃないか。
嫉妬?
――違う。
そうやって自分の子供な部分を、冷静に指摘する大人な自分もいる。なんだか、胸の中がもやもやした。
「わかった。お前、さては悔しいんだろう!? 俺にあんな可愛い娘を先越されて」
「先越されて、って言うほどのこと、何もしてないじゃん、カトちゃん」
「阿呆! これからするんじゃい、愚か者!」
「ハイハイ。ガンバッテ」
「うわ、心が全然こもって無い!」
「込めてないもーん」
「お前、最近、可愛くないぞ!」
そうかもしれない。
直久は、心の中で、加藤に返事をした。そう、直久は自分の中で良く分からなくなってしまっていた。
ある日を境に、直久の心の中で、何度も何度も繰り返される自問自答。
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