一二章 ホタルガリ

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  (え? 何、何? どういうこと?)  その場の雰囲気が変わったことだけは、直久にもわかった。だが、好転したとは思えない。マロが女神の逆鱗に触れたような気がしてならない。 「……我が君、何か誤解があるようだ」 「お前など知らぬ」 「我が君、私には昔も今も、貴女しかおらぬ」  返事の代わりに女神がすっと視線をそらす。 「このような惨めな成りをしてまで、貴女を追いかけてきた私の気持ちが分からぬのか?」  神である私が。  ヒトの力を借りて。  ヒトの器を借りて。  そうまでして、貴女を守りたかった――その気持ちが分からないのか? 「……」 「貴女が待っているから。貴女が私を呼ぶから」 「……黙れ」  貴女が私を思って泣くから……そのたびに貴女の悲しみの涙が雨となって降り注ぐ。  そのたびに、私がどれほど胸を痛めたか。  逢いたくても逢いに行けぬ、無力な自分にどれほど嘆いたことか。
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