一二章 ホタルガリ

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  「……即刻、立ち去れ。さもなければ、その器ごと我が子の餌となろう」 「そうか……もう、私など必要なかったのだな……」  自分だけが逢いたいと思っていたのか。  自分だけが寂しく辛い日々を送っていたのか。  貴女も同じだと思っていたのは自分の勘違いだったのか。  長い、長い、長い時が……私たちをこうも変えてしまったのだな。  ならば――いっそ――。 「私を捧げよう」  最後まで、貴女のために、貴女を思って――消えゆこう。  私の残り僅かなこの力、貴女に捧げよう――。 「まだ、人間を食すより多くの力を得られよう」  女神の背中にマロが優しく語りかける。  女神は拒絶するように、何も語らない。 (なんで……そこまで……)  そこまで静かにことの成り行きを見守っていた直久の頬に、いつしか涙が伝っていた。
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