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――美しい。
他の言葉が見つからない。
誰もが羨むだろう。
金銭を差し出してでも、見たいと望む人もいるかもしれない。
それほどに幻想的な空間になっていた。
だが、美しい光景に目を奪われると同時に、気がついてしまった。
――そう、囲まれているのだと。
どこにも逃げ道はない。
動きが素早いのではない。
最初から、囲まれていたのだと。
……カサカサ。
真夏の生温かい風が、つい美しい光景に感動してしまった彼をあざ笑うかのように、その場の草木を、彼の汗ばむ頬を撫でていく。
再び、風が止んだ。
次の瞬間。
「うわああああ……」
男の断末魔が小川の静けさを引き裂いた。
人間の形を模したような弱い発光物体が形成されたように見えたが、数十秒後、何事もなかったように、その場に暗闇が戻った。
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