一章『夜の住人』

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「クヒヒヒヒヒハ!!」 再び迫る顎、それでもこれまでの動きからある程度の軌道は予測することができる。 (この顎の軌道は基本的に直線的だ、最小限の避けで最大のチャンスを作り出せる) 黒影は首を傾ける程度の回避行動を選択した、がその直後。 「オイオイ?ちゃんと目ぇついてんのか?」 柳本人による攻撃が炸裂した。 単純な膝蹴りだったが不意を突かれた分、そのダメージも増す。 続く柳の追い討ちは首を刈り取るかのようなラリアット。 「がぅっ!!!」 膝蹴りの衝撃で浮いていた黒影は大きく後方に吹き飛んだ。 「これでくたばるような紙キレみたいな野郎じゃないはずだ・・だから」 さらなる追撃を兼ねた顎が繰り出される。 それが黒影に当たるか当たらないかくらいの距離にさしかかった時、顎が突然落下した。 そのすぐそばに黒影が立っていた。 「【力の支配】か・・・噂に聞く通り何でもありなんだな、だがそれが面白い」 「思い出した・・・ぞ!!」 黒影は叫ぶ、まるで宿敵を前にしたみたいに。 「柳ィ!!俺の記憶が確かならこの学園に入学する前に会っているはずだ、テメェとな」 「カハハハハッハハッハ、そうだ正しいその記憶は正しいぞ!」 「そしてテメェはその【捕食者】で俺の能力を喰ったはずだ」 「しかし・・黒影くんはどんな能力を喰われたのか覚えていません、なぜでしょうかねぇ?まぁ理由は単純明快、君がその能力を認知できていなかったからです、わかりましたか ?」 ギリギリと黒影の拳が軋む、怒りがこみ上げているのが本人じゃなくてもわかってしまう。 「どうして今頃記憶が戻ったのでしょうか?というか生きてるのが不思議だな今となっては、さすが『黒』を継ぐ者だな」 ドンッ!と音がして黒影が駆け出す。 黒影の服の袖の辺りから鎖が射出されたが、柳は慌てずに対応、顎が鎖を噛み千切る。 「それにしたって・・・どうしてそんなに怒ってるんですか?」と柳はわかりやすい作り笑顔で言った。
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