11人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
柳の一言で黒影は我に帰った。
どうしてそんなに怒っているのか、考えてみればそうだった。
「俺はどんな記憶が無くなっているのか、それが分かっていない…ただ記憶が無いということのみ」
「まァ、君がやる気ならいいんだけどね」と柳が言ったとたん、黒影が動き出した。
一気に加速し、柳に飛びかかる。
ここまでは確かにそうだ、と柳は思い込む、しかし実際は。
柳の肩を踏み台にするようにして、黒影は飛び越えた。
「!?んなァ!!」
そのまま減速せず、駆け抜けていく。
「逃げんのかァ?」
「残念ながら、用事を思い出したからな、お前には構ってらんないわ」
「そうか、そうですカ…ヒャハハハハハハハ!食い潰してやるからよ!」
柳の体から伸びる顎が集まり、一本の太く、長い顎となった。
その大きな顎は今までの顎とは一段違う速度で黒影に襲いかかる。
完全に背を向けていた黒影は顎の発見が遅れてしまった。
「こいつは大飯喰らいだからよォ!」
「キッ!!」
ブチブチと何かが引き千切れるような音がする。
最初のコメントを投稿しよう!