懐古

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「んふ、海斗の匂いがする」 枕に顔を埋めて、嬉しそうに布団で微睡むその背中にスッと指を這わすと、 「ひゃぃ」 変な声を上げ、顔だけ俺に向け睨んだかと思うと、クルリと仰向けになって手を伸ばし、 「いっぱい、抱っこして」 愛理紗を見下ろす俺の後頭部に両手を掛け、自分の胸の膨らみへ導く。 それからは何度も激しく求め合い、気付いた時には、既に外は薄らと明るく成っていた。 何時の間にか、抱き合ったまま寝てしまい、愛理紗を起こそうとするも、 「もう少し、 海斗の匂いに包まれてたい」 いやいや、君は学校でしょうが! 無理矢理引き剥がして布団を出ると、ジト目の愛理紗がアッカンベーをした。 俺は悪くないので、スルーしてキッチンでコーヒーを入れていると、後ろから手が延びて来て、 「お先に貰いぃ!」 来るのは解ってたよ。 黙って自分の分を注ぐと、勝ち誇った顔の愛理紗に、軽くデコピンして、 「遅刻しても知らないよ」 時計を一瞥して、慌てて出かける準備をし、 「愛理紗、いきまーす」 玄関で敬礼すると、元気に飛び出して行った。
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