序章

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凪いだ海が、鏡の様に月を映している。 澄めば見ゆ 濁れば隠る 定めなき この身や水に やどる月かげ 宮内卿永範の歌を、ふと思い出して苦く笑う。 水面から俺の顔に視線を移して、「で?…」と、岳宮が苛立つ様に声を発した。 聞きたい事は解ってるさ。 何しろ、中学時代からの腐れ縁だからな。 「明鏡止水」 俺は水面に出来た二つの微かな波紋を見ながら、心とは真逆なことを呟いた。 信じていない目だな… まぁ、当たり前か。 しばしの沈黙を破る様に 「おっ!ナイトダイビングすか。 うぉ!二人とも女じゃん」 素っ頓狂な声で、康平が指を差した。 少し重く成り始めた空気から逃げる様に、「ふっ…」と、詰った息を吐き。 交錯したままだった視線を、岳宮から外すと、 岳宮も釣られた様に、ビーチへ目を戻した。
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