懐古

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目の前には、見上げる様な高層マンション、ホテルの様なエントランスには応接セット迄有った。 「あの…誰が住む部屋?」 「海斗と私の部屋」 「おぉ~、そりゃ無理だ」 家賃高そうだもん。 「ここ気に入らない?」 あっ、またそんな目して、でもこんな家賃高そうな部屋は維持出来ません。 「愛理紗、来たのか? 家具も全部揃ったぞ。そちらが例の海斗君かい?」 ん…「何方?」愛理紗に伺う。 「私の祖父だよ」 聞いてね~と思いながら、 「はじめまして、谷口海斗です」 「うん、愛理紗から噂は聞いてるよ。」 流石、ダンディな爺さまだ。 「海斗君、ここに孫と一緒に住んでくれるかい?」 口籠もる俺…屁たれだ。 「あははは、家賃なら気にしなくていいぞ」 スッと俺の耳元に顔を寄せ「ここは、私の隠れ家だ。家内にバレてな、愛理紗に譲ことにしたんだ。 この話は内緒にな」 そう言うとウインクして、 「リホームしてある、遠慮せず、好きに使いなさい」 「ありがとうございます。 遠慮無く、住まわして頂きます」 こんな新しいマンションがリタイヤ組の隠れ家な訳は無い、わざわざ愛理紗のために用意したんだろう。 俺は、心から感謝した。
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