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杏子は何やら軽快な鼻歌を歌いながら台所へと入って行くかと思いきや、突然振り返って僕に言う。
「祐さんはピーマン大丈夫ですか? 昨日買ってきたのが残っているので、お夕飯に肉詰めを作ろうかと思うのですが」
「ああ、うん、大丈夫」
基本的に好き嫌いの無い僕はいいとして、問題は彼女の食べられるものだと思うんだが、特に食べる必要の無い彼女は食に対して無頓着なようだ。
でも僕一人が黙々と食事をするのは少し、気まずい。せめて食べる僕をじっと見ないで欲しい。
でも美味しいって言うと凄く嬉しそうに笑うんだよなぁなんて考えていたら、小説のページは全く進まなかった。
* * *
二階にある僕の部屋の向かって右隣、かつては祖父使っていた部屋の中、古ぼけてはいるが洗濯されて清潔な匂いが漂うベッド。
そこに横たわって眠そうに目を擦る杏子は、やっぱり今日も不安気な顔をしている。
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