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「おやすみ、また明日」
出来る限り優しく言って頭を撫でても、彼女は暗い顔のままだったが、おやすみなさいと小さく呟いてスリープに入った。
立ち去ろうとして何やら服の裾に違和感を感じ、見ると彼女の手がしっかと僕の服を掴んでいる。
眠っている間に置いて行かれるのではないかと不安なんだろう。彼女の境遇を考えれば仕方のないことだ。
僕は彼女を置き去りにはしないけれど、白くて滑らかな指をそっと解くのは何故か酷く胸が痛んだ。
彼女の寝顔を見ていると、やっぱり僕らは似ているのかもしれないと思えてくる。ただし決定的に違うのは、彼女は置いていく側で僕は置いていかれる側だということ。
万が一、彼女のマスターが彼女を迎えに来てしまったら、彼女はここを出て行き僕はまた一人になる。
そうなったら僕はもう一度自殺を図るのだろうか。それともこのまま生きて、金が底を尽きかけたら日常へと帰るのだろうか。
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